理論

アクティブラーニングの背景と授業設計の3つのポイント

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文部科学省はつい最近になって学校教育におけるアクティブ・ラーニングの導入を奨励しはじめました。

文科省はアクティブ・ラーニングを次のように定義しています。

教員による一方向的な講義形式の授業とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学習者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である

(文部科学省HP『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて ~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~』の答申の用語集から抜粋)

 このように詳細な定義がなされているものの、要点は最初の一文目の読点までの「教員による一方向的な講義形式の授業とは異なり」の箇所です。つまり、アクティブ・ラーニングという言葉は、従来の日本の教育において極めて大きな地歩を占めていた「講義法」というものに対する反意語としてにわかに出現した言葉なのです。

 むろん講義法には良い点もあり、知識の獲得などの目標に対してまったく効果がないわけではありません。しかし教育の目標は知識の獲得だけではなく、英語や数学などの科目はむしろ技能の修得が主要な目標であり、技能の修得に対して講義法は効果的ではありません。また、知識の獲得が目標とされる場合でも、100%講義法の授業より生徒の主体的な活動を組み込んだ授業の方がより知識の定着が図れます。つまり、教育の目標が何であれ、講義法のみに終始する授業は最適な授業形態ではないということです。迫り来る超AI時代機械化の波を前にして日本の教育界隈がようやくこのことに気付き、アクティブ・ラーニングの試行と議論が加熱し始めたというのが実情でしょう。

 大雑把な言い方になりますが、欧米などでは、すでに旧来の講義法の限界に見切りをつけ、能動的・主体的な授業設計をするのが常識になってきています。たとえば英語には「Active Learning」という言葉はありません。間違った英語というわけではありませんが、少なくとも日本のように「アクティブ・ラーニング」という言葉が教育術語として扱われているという状況は見られません。学びが効果的で本質的であるためには「Active」であらざるを得ないという前提が、あえて意識して口にするのも愚かしいほどに一般的な考え方として広まっているのです。このため、「能動的な学び」などと言えば、

――そんな当たり前のことを、なにを改まって今さら。

と思われるでしょう。

つまり、アクティブ・ラーニングを目的にするまでもなく、本質的で効果的な学びを追求すれば「アクティブ」な授業設計に行き着かざるを得ないのです。

そして、より良い授業設計に必要な姿勢は、じつは非常にシンプルです。

授業設計の際は、下記の3つのポイントを意識しましょう。この3つの原理をもとに授業を設計し、実施しながら試行錯誤を重ねてゆくことで、みなさんの授業は驚くほど改善するでしょう。

  1. 授業の目的と目標を明確に設定すること
  2. 目的・目標から学習者目線で逆算して授業設計すること
  3. 学習への内発的動機を高めること

上記3ポイントを意識すれば、アクティブラーニングという対義語をつくられ目の敵にされている講義法も違った捉え方をすることが可能です。

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コメント

  1. 『学び合い』 @manabiai 中の人 より:

    アクティブラーニングの定義の要点は、「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」ではないでしょうか。

    一方向的な講義と異なっていても、上記能力が身に付かなければアクティブラーニングの価値はありません。

    逆に、上記能力が身につくのであれば形式はなんでもよいのだと思います。
    若尾さんがおっしゃる「授業の目標目的を明確にする」というのはまさにそのことではないでしょうか。

    1. 若尾和紀 より:

      コメントありがとうございます。おっしゃる通りで、実に本質的なご指摘だと思います。本来のアクティブ・ラーニングは、コメントしてくださったとおり「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」ことを主眼に実施されるべきものですよね。ただ、日本の教育現場では「従来の講義法ではいけない」というところから問題意識がスタートし、その対になる概念をつくりだす必要からアクティブ・ラーニングという言葉が出てきたのだろうという背景を述べさせて頂きました。そういう意味での『このように詳細な定義がなされているものの、要点は最初の一文目の読点までの「教員による一方向的な講義形式の授業とは異なり」の箇所です。』という記述でした。

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