理論

学習への内発的動機を高めること

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よりよい授業設計のための三つ目のポイント「学習への内発的動機を高めること」について説明していきます。

 すべての学習者が自ら望んでその授業に出席しているわけではないでしょう。小中高であれば授業に出席しないという選択肢をとることは不可能に近く、また大学の授業でも多くの学生は単位取得のために出席しています。であるとすれば、居眠りや内職をする学生が出てきてしまうことも十分に理解できます。では、学習者の積極的な授業参加を促すにはどうすればよいでしょうか。

外発的な動機を促す

 もっとも簡単な方法は、外発的な動機を仕掛けることです。出席点や発言ポイントなどはよく採用されている手法ですが、このような方法で学習者を縛るのはできるだけしたくないというのがすべての教師の認識ではないでしょうか。このような外発的な要因は、本当の意味で学習者の学びの意欲を駆り立てることはできないからです。そこで重要になるのが、”内発的な”学習動機を掻き立てる工夫です。

内発的な動機

 内発的な動機とは、学習によって得られるもの以外に何も報酬がない動機を指します。先に挙げた発言ポイントなどは、発言によって得られる学習の充実の他に、授業での高評価という報酬が存在します。また、これは家庭での例ですが、お子さんの成績が伸びたらプレゼントを買ってあげる約束をするなどのケースも、学習によって得られる知識や便益だけでなく、プレゼントという明らかな外部的報酬が存在することになります。

 つまり内発的な動機とは、その学習活動自体魅力や必要性を感じさせ、「面白そう」「やらなきゃ」と思わせる仕掛けのことを言います。内発的な学習動機を喚起する手法として、ここでは主に2つのやり方を紹介しようと思います。

内発的動機を促す

問いにより授業の切り口を変える。

 1つは、授業の切り口を工夫することです。たとえば高校の数学Ⅲで学習する「等比級数」というものがあります。私も高校生のころにこれを学びましたが、内発的動機を喚起する何の工夫もされないまま単に受験のためだけに勉強したために、退屈でつまらなかったという思い出しかありません。

 しかし、この等比級数という概念は、経済学の「割引現在価値」という考え方に利用されており、身近な例で言えば株価の決定などに欠かせない考え方になっています。私は大学の経済学部に入ってはじめてこのことを知りましたが、等比級数が役に立つということを高校生の頃に知っていればどれほど勉強に熱が入ったでしょうか。少しの工夫で、授業をより魅力的なものに変えることができます。

たとえば、

「株価がどのように決まっているか知っている?」

という問いかけから授業を始め、実際に等比級数を活用して株価を計算してみることを授業の着地点にすることで、学習者の内発的動機を喚起することができるでしょう。

このように、切り口を工夫するだけで学習動機は大きく変わります。

授業内で完結する具体的な目標を設定する。

 もう1つの方法は、授業内に学習動機を仕込むことです。たとえば英語のリーディングの授業で、学習者に英文を読ませるとします。学習者は何のためにその英文を読むのでしょうか。

「英語の読解力を伸ばすため」

という答えが返ってくるのかもしれませんが、これは学習者にとっては漠然としすぎていて身近でなさすぎるために動機としてはうまく機能しません。健康に悪いと知りながらも煙草を吸う人がたくさんいるように、人間は漠然とした未来のことを動機に行動できるようにはつくられていません

 ですが、「この英文を読んだあと、内容を要約してペアに伝えましょう」という指示を出せばどうでしょう。学習者はその授業の中に読解する動機を得ることになります。ペアに説明するときのことを意識しながら読むので、読解にかける意気込みも違ってくるでしょう。このように、授業内のひとつひとつの活動に対して、授業内に目的を設定しましょう。さらには、その動機が他者(他の学習者など)に関係していれば、活動に対する責任が発生するためなお良いでしょう。

 この「学習への内発的動機を高めること」は、これからの学校教育において特に重要な意味を持ってくる項目です。技術の進歩によって従来の学校が担ってきた「知識を体系的に伝達する」ことの相対的な価値が減じてきたことにより、学校の役割も変化を求められています。今後の学校に期待される役割は、知識の伝達から、学ぶ意欲に火をつけることや、学びたいと思える環境の提供に移ってきています。

 

授業設計のための残り2つの手法についてはこちら

授業の目的と目標を明確に設定すること

目的・目標から学習者目線で逆算して授業設計すること

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