実践

学習者から見た目標設定の重要性と具体例

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以前、授業設計における目的や目標がどのようなものか、ということについて書きました。

授業の目的と目標を明確に設定すること

今回は、授業において目的や目標を設定する学習者目線でみたメリットについての私の考えを記します。

教育者からみた目的・目標設定のメリットについてはこちら

教育者から見た目的・目標を設定する重要性

目標が動機を生む

 そもそも、ゴールが明瞭でないと、学習者は何に重点を置いて授業に参加すればよいのかわからなくなります。ゴール地点がどこにあるのかが不明なマラソンでは、ランナーはペース配分やレース戦略を考えることはできません。つまり、授業について学習者が迷子になってしまうのです。学生が講義についてこれてないように感じるときや、つまらなさそうにしているときは、「今何の時間なのか」学生が理解できていないのかもしれません。

 逆に目標がしっかり見えていれば、学習者は授業内で扱うすべての情報や教材に対して、真剣に取り組む意味を見出すことができます。目標から逆算して、何のためにその活動をするのかという、明確な動機を持ちつつ授業に臨むことができます。

具体例

 私が大阪大学で行っているREALプログラムの授業では、”One class, one issue.”(ひとつの授業にひとつのテーマ)の授業設計を心がけています。毎回の授業にテーマとなる問いを設定し、その問いに対する学習者各々の答えや考え方を英語でつくりあげることを目標にしています。例を挙げると、

「How blockchain changes the world?(ブロックチェーン技術は世界をどのように変えるか?)」

「Does AI development make us happy?(人工知能の発達は人類を幸せにするか?)」

「Should Japan be more open to immigrants? (日本は移民を受け入れるべきか?)」

「Why did the world ever become so unequal?(なぜ世界はこれほど不均衡になったのか?)」

「How can we avert an agricultural crisis?(我々はいかにして食糧危機を回避し得るか?)」

「What would you do to improve your willpower?(意志力を高めるためにあなたは何をしますか?)」

 このような、容易には答えの見つからない問いを授業の冒頭で学習者に投げかけます。授業中はこの問いをスライドのトップに掲げ続け、この問いに対する自分自身の答えを見つけるという授業の目標をつねに学習者に意識させるように工夫しています。そして、これらのテーマ・クエッションに沿う形で、各授業の目標設定を行います。上記の問いの中から一部を例として紹介します。

 

問い「ブロックチェーン技術は世界をどのように変えるか?」

→目標「ブロックチェーン技術の仕組みと特長を理解し、仮想通貨以外の分野での実用例を英語で説明することができる。また、ブロックチェーン技術の応用例を考え、自分の案を90秒で英語で伝えることができる」

問い「人工知能の発達は人類を幸せにするのか?」

→目標「人工知能技術の発達の過程と現状を英語で説明することができる。また、技術が今後の人類社会に幸福をもたらすかどうかについて、90秒で英語で論理的に考えを述べることができる」

問い「日本は移民を受け入れるべきか?」

→目標「移民の受け入れに関する日本や欧州各国の状況を理解する。また、これらの現状や今後の展望を踏まえ、日本がとるべき移民政策のあり方を理由とともに2分の英語で述べることができる」

問い「意志力を高めるためにあなたはなにをしますか?」

→目標「意志力の増減のメカニズムを理解する。また、自分がいまやろうと思っているがなかなか取り組めていない課題をひとつ取り上げ(英語の学習、ダイエット、早起きetc)、改善のための案をつくり、90秒の英語で発表できる」

 このように、授業の目標を明確にし学習者と共有することにより、学習者はなにを目指して授業に参加すればよいのかをはっきりと認識することができます。明確な目的意識のもとにすべての活動を行うので、活動にも自然と熱が入り、ねらいを絞って教材に臨むことができます。

 たとえば、冒頭に挙げた

「ブロックチェーン技術はどのように世界を変えるか?」という授業では、

「ブロックチェーン技術の仕組みと特長を理解し、仮想通貨以外の分野での実用例を英語で説明することができる。また、ブロックチェーン技術の応用例を考え、自分の案を90秒で英語で伝えることができる」

 という目標を設定しましたが、この授業ではまずTEDのブロックチェーンについてのプレゼンテーションをリスニング教材としてあつらえたものをリスニングし、その後ブロックチェーン技術の応用例を紹介する記事2つをペアで分担してリーディングし、読んできた内容をパートナーにシェアする活動をしました。学習者たちには授業の問いが共有されているので、なぜこのTEDをリスニングするのか何のためにこのリーディング活動をするのかを十分に理解した上で活動に臨むことができます。ブロックチェーン技術について理解できていなければ、また既に実用化されている例を知らなければ、自分なりの応用例を考え出すことはできません。目標とテーマが明確に共有されていることで、はじめて学習者は「何を学べばよいのか」をはっきりと認識することができるのです。

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