実践

教育者から見た目的・目標を設定する重要性

  • こEエントリーをEてなブックマEクに追加

以前、授業設計における目的や目標がどのようなものか、ということについて書きました。

授業の目的と目標を明確に設定すること

これについて、授業において目的や目標を設定する学習者目線でのメリットについて書きましたが、教育者目線でみると授業の目的・目標の設定は授業設計を容易にします。

授業内容の判断軸

 目標から逆算して授業内に行う活動を決定してゆくことで、学習内容を目標達成に必要なものだけに絞って精選し、授業時間をより充実度の高いものにすることができます。

 授業設計の際は、いま組み込むかどうかを考えている活動が、授業の目的や目標にどう関係するのかをつねに考えながら進めていきましょう。目標との関連性に気をつけながら学習活動の候補に優先順位を付けていくことで、授業としての一貫性を失うことなく、もっとも効果的な活動群で授業時間を埋めることができます。

実際の授業設計における例

 私が経験した例をひとつ挙げてみます。ジャレド・ダイアモンド氏の『銃・病原菌・鉄』をベースに「Why did the world ever become so unequal?(なぜ世界はこれほど不均衡になったのか?)」という授業を大学生向けに90分✕3で組んだことがありました。この『銃・病原菌・鉄』は、なぜ欧米が世界で最初に成功した社会になれたのかという謎を過去1万年の人類史から解き明かすことで、白色人種の人種優位説をくつがえした歴史的な名著です。

 この授業をつくる上でもっとも苦慮したのは、原著の内容量が膨大なため、授業内で扱う内容を270分に収まるよう精選することでした。しかし、授業で掲げる問いと目標を明瞭に設定していたため、目標との関連性を基準に内容を絞ってゆくことで授業として一貫性のあるものを作ることができました。たとえば、同書に病原菌の発生と伝播についての記述があり、非常に好奇心を掻き立てる内容でぜひ授業に組み込みたかったのですが、授業の問いである「世界の不均衡の原因」とは直接的に強い因果関係はなくあくまで派生的な内容であったため、授業のコンテンツからは除外しました。

受講生からの評価

 私が大学生向けに行っているREALプログラムでは、授業後にコメントシートの記入をお願いしています。このコメントシートを見る限り、この3回の授業での学習者の満足度は非常に高く、またテーマである「世界の不均衡の原因」を十分に理解していることがわかったので、この選択は正解であったと考えています

「3回の授業で、”英語が身についた”というより”普段習わない新しいことを学べた”と感じられたのが嬉しかったです」

「この3週間の内容、すごくためになりました。地理好きなので、geographyが不均衡の最大の要因になっていたという結論は考えさせられました。病原菌についても気になります」

 2つ目のコメントに書いてくれているように、学習内容に興味さえ抱かせることができれば、授業内で扱わなかった内容も学習者は勝手に学んでいくでしょう。とにかく授業の時間は、いかに終始一貫した内容を効果的に充実して学ばせるか、という点に注力すべきでしょう。

 このように、目標と目的の明確な設定は、授業内容を厳選し、効率的に一貫性の高いコンテンツをつくる上で非常に役に立ちます。教師は学習者の時間を預かる立場であり、50分ないし90分で可能な限り充実した学習体験を提供する義務があります。そのための学習内容の精選に、明確なゴール設定は不可欠です。

  • こEエントリーをEてなブックマEクに追加

意見や質問、または、講演・執筆・セミナーなどお仕事の依頼は下記フォームよりお願いします!





コメントを残す

*