幼児教育

早期教育として幼児期に英語を学習する効果とメリットは?

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 文部科学省が推し進める英語教育の早期化は、賛否の分かれる論争を生んでいます。話す・聞くを中心とする「外国語活動」は小学3年生からに前倒しされ、5年生から本格的に教科としての学習が開始されるという発表がすでになされています(文部科学省「新学習指導要領」P156  )。今回は、英語教育の早期化(特に幼児期における英語教育)の効果と是非について論じていきたいと思います。

臨界期仮説

 私は、英語教育の早期化を正当化できる理由はたった1つしかないと考えています。

 語学学習における臨界期仮説です。

臨界期とは

 語学教育界隈の人たちにとっては一般的な説ですが、耳慣れない方もおられるでしょう。臨界期とは、ある刺戟を与えたときにその効果がよく現れる時期のことを言い、語学修得における臨界期は、簡潔に言えば最も効率的に修得できる時期といった意味で、学習開始の適齢期と言い換えてもよいでしょう。臨界期仮説の影響は、リスニング力と発音において顕著に現れます。逆に文法理解や抽象的な語彙の修得などの点では、思考力の発達した中学以降のほうが効果的です。

英語学習の臨界期 赤ちゃんの耳

 生まれたばかりの赤ちゃんは、世界のすべての言語のすべての発音の違いを認識することができる耳を持っています(参考『外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か』白井 恭弘氏著)。このことは、日本人の父母のもとに生まれた赤ん坊に日本語では区別しない子音や母音を聞かせたときの反応を調べる実験などによって明らかにされています。しかし、この能力は成長とともに退化していきます。たとえば、日本語環境だけで生活する人に、英語のLとRを聞き分ける聴覚能力は必要ありません。脳は、その人にとって最も効率的になるよう、不要な能力を切り捨ててゆきます。「8歳までLとRを聞き分ける必要がある場面がなかったから、この音の違いは無視してもよいな」と耳や脳が判断すれば、その能力をリストラしてしまうというわけです。

 子どもの言語習得が大人にくらべて速いと言われる最も大きな理由のひとつがこの臨界期仮説でしょう。耳が退化(効率化)しきってから再度リスニング力を積み上げていくのは非常に骨の折れる作業です。中学に入ってはじめて英語を学んだ私もこれに相当苦労させられました。逆に、臨界期を終える前の子どもたちにとっては、すでに持っていて埋もれているものを掘り出す作業であるために、耳も発音も大人よりはやく上達できます。

 

幼児期英語教育のメリット

 臨界期となる年齢がいくつなのかについては未だに定説がなく、環境や人種などさまざまな先天的・後天的影響に左右されるとも言われており、この稿でもはっきりしたことは述べられません。が、一般には6歳~8歳、遅くとも12歳ごろには臨界期の終わりを迎えると言われており、この時期に外国語を耳で聞く習慣を学校教育の中で持ってこなかった日本人が、英語の特にリスニングが弱いとされる事実を濃厚に裏付けています。

 つまり、英語教育を早期に開始することの利点は、臨界期を終えて退化させてしまう前にリスニングと発音の柔軟性を”楽に”獲得できることです。

 逆に、ただやみくもに

「英語にふれる時間を増やすことで英語力を伸ばす」

という考えのもとに行う英語教育は無意味に近く、この臨界期を意識した授業をしなければ無為に終わるでしょう。先にも述べたとおり、文法的な理解や語彙力の獲得などは、情報処理能力や記憶力の発達した中学以降のほうが効率的に吸収できるため、小学校までの教育でこれらに時間を費やすのは非効率と言う他ありません。早期教育でしかできないことをするという目的のもとでのみ、他の教科に割く時間を削って英語を学ぶことが正当化され得るでしょう。

 具体的には、英語にあって日本語にない音(RとL、SとTH、BとV、aとu, oなど)に触れさせ、これらの聴き分けと発音に慣れていくことを目標とする活動を楽しみながら行える授業設計が求められるでしょう。「楽しみながら」というポイントは、英語への拒否反応を育ててしまうことを避けるために、早期教育において特に重要です。これらの発音の違いが分かることで進めていくことができるゲームや英語の歌などを中心に授業を組むとよいでしょう。

 

英語を伸ばすために幼児期に行うべきことは?

 語学学習の能力は、語学だけで伸びるものではありません。ここでは、語学習得に好影響を与えるものを2つ紹介したいと思います。 

 音楽素読です。

音楽

 まず音楽について述べましょう。

 私がこれまで様々な方の英語学習に関わってきた経験から、なにか音楽や楽器をやった経験のある人は語学習得(特にリスニングと発音において)が比較的はやい傾向があるように思えます。当然といえば当然で、普段から周囲の音や自分の発する音に対して敏感である必要があるため、慣れない外国語の音に対しても鋭敏な感覚を持つことができるのでしょう。私自身、英語自体は中学スタートだったものの、幼い頃からピアノをやっていたことは英語の上達に大いに利したと感じています。

素読

 もうひとつは素読です。

 素読は、その絶大な効果の割にはあまり知られていません。

 素読(そどく)とは、主に古典のテキストを、意味や字義の詮索はせず、リズムや音を楽しみながらただことばを声に出して朗読することを指します。日本では江戸期に寺子屋などの教育機関において漢籍の素読が最も基本的な学習として実施され、それによってもたらされた高い教育水準が、幕末維新と明治の文明開化の原動力になったと言われています。明治初年、江戸期の素読教育の恩恵を受けた志ある青年たちは、競って外国語を学び、欧州各国に留学して各分野の当時一流の技術や知識を日本に持ち帰り、日本の近代化を押し進めました。

 この素読は、母語や外国語の別を問わない、包括的な言語能力知的能力を大いに引き上げてくれます。小学校の国語の授業では、必ずといっていいほど、

教科書を音読する

という宿題が出たかと思います。あの宿題は、短期的にはあまり意味がないように思えても、じつは長期的に見て非常に大きな意味があったのです。

この素読の効用については、説明に相当の字数を要するので、後に詳しく取り上げたいと思います。

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